肩コリというのは腰痛と並んで今や国民病となっています。
肩コリが酷くなってくると、それが起点となって頭痛や手のしびれなどの症状が出てくる場合があります。
しかし、多くの人が感じている症状は軽度なものが多いので、多くの人は何かしらの首肩の症状は抱えていてもその違和感を許容して生活している人がほとんどだと思います。
しかし街でのアンケートで、肩のコリ感が強くなってきたり、頭痛等が出てきたりした時にどのように対処するかという質問に最も多かったのが「マッサージや整体に通う」(40%)というものでした。
逆に言うと、それだけ多くの人が整体やマッサージで「肩コリ」を治そうとしているにもかかわらず肩コリが治ってないということになります。
今回紹介する患者さんも「10年以上首肩の痛みがある」という方でしたが、施術後は肩こりがかなり改善したと仰っていました。
今回の患者さんは55歳女性。
主訴は「慢性的な首肩のコリ」です。
10年以上前から首肩のコリを感じるようになったそうで常に首が詰まる感じがある、ということでした。
実際にその場で上下左右に向いて、首を自動で動かしてもらい、どの動きが一番引っかかる感じがあるか調べてもらいました。
すると、左右はそこまで気にならないけど上を向く時が一番詰まる感じがあるということで僕から見ても60°くらいしか上を向けていませんでした。
頚椎伸展の参考可動域は50°程度なのでその先で止まっているということは胸椎の影響などが考えられます。
実際に頚椎と胸椎の椎間関節を一つ一つ検査していくと頚椎には異常がなく上部胸椎で問題が起こっていてT1、T2に硬さが
出ていました。
また、座位検査で他に気になったのが骨盤の後傾。
左右ともに骨盤が後傾しており、右よりも左の方が顕著に後傾していました。
そこで骨盤の後傾と首の詰まりが関係あるかどうか調べてみたところ、首のつまり感10→6くらいになるということで「骨盤の傾きも首に影響してそうですね」と伝えて施術に入りました。
施術はまず全体的に軽く整えてみた感じで、起き上がってもらい、上を向いてもらうと90°くらい向けるようになっていて、本人に首のつまり感の変化を聞くと10→5くらいになったということでした。
上部胸椎(T1、T2)の硬さをチェックするとT2の硬さはなくなっていて、T1の右側の硬さが顕著に現れていました。
さらに、座位で骨盤の後傾具合を再度チェックすると左右ともに改善し、特に左側の骨盤の後傾はあまり見られませんでした。
先程は左の方が右よりも後傾していたのに体全体の歪みを調整すると、左よりも逆に右の方の後傾が目立つようになったということです。
そこで、次は右の腸骨の後傾に影響している箇所を探していくと、右足外果付近で反応あり。
「そういえば、右足は過去に酷い捻挫をしたことがある」と患者さんが思い出していました。
そこで、右足の遠位脛腓関節付近を調整すると、右の骨盤の後傾もなくなり、骨盤の傾きの左右差はほぼなくなりました。
さらに、右T1の硬さもほとんど消えていました。
患者さんに再度上を向いてもらうと120°くらい向けるようになっていてビックリされていました。
首のつまり感も5→0になって全く違和感がなくなったそうです。
最後にT1椎間関節の左右差(右の動きの渋さ)が少しあったので、右T1を調整。
すると、T1椎間関節の左右差は完全になくなりました。
1週間後に来院された時は「今までと全然違います。首がすごい楽で肩こりをほとんど感じなくなりました」と仰っていました。
その後はメンテナンスで2週間に1回のペースで通っていただいています。
今回最初の段階で気になった骨盤の後傾に着目し、関連を調べて症状に影響していた右足の問題を見つけることができました。
一見関係ない問題でも関連することは多々あるので異常がある箇所は必ずチェックしておくとヒントになる事が多いです。
今回も首や肩周辺にはほとんど触りませんでしたが、反射を調整していくことで首や肩の緊張が取れて一番問題になっていた右T1の硬さが取れました。
このように施術の中で段階的に問題を解いていくと主訴部位を触らなくても身体は変化していくという良い例でした。